伝え忘れた想い。
「リンダ先輩」
21時過ぎ、何時もの様にベンチに近付くとリンダ先輩は誰かと電話をしていた。
「あたし、先に帰りましょうか?」
小声で言うと、リンダ先輩は頭を横に振り、自分の隣を叩く。
座って待っとけってことか…。
リンダ先輩の隣に座ると、盗み聞きするのも嫌だしiPodを取り出して
音量を上げ、隣にいるリンダ先輩の声が聞こえないように音楽を聴にながら目を閉じる。
まるで隣に誰もいないかのように。
意識なんてしないように。
曲が4曲目の前奏が流れると、リンダ先輩側のイヤホンが外れた。
いや、外された。
「お前音量上げすぎ。
何回呼んでも無視するから驚いたわ」
「あ、すいません。盗み聞きするの嫌だったんで」
素直に思っていたことを口にする。
「別に聞かれても良かったから隣座らせたのに。
そういえば、これって最近出たiPod?」
リンダ先輩は、あたしの太ももに置いてある物を指さす。
「あ、はい。この前買ったんです」
「まじか!俺もそれ買った!
俺もオレンジのiPod!お揃いだな」
「お揃いって…」
「コウコとお揃いって初めてだよな」
そう言って笑ったリンダ先輩の笑顔を見た瞬間、今まで逃げていた感情が一気に溢れた。