伝え忘れた想い。


みんなのざわめきが教室中に零れる。


振り返ってあたしをじっと見る金森が視界の隅に入る。




「先生、なんで5日間もその先輩のこと話さなかったんですか?」



「…昨日分かったんだ。

林田っていう生徒はサボリ癖があって良く授業や学校もサボる。

それで担任の先生も家に欠席の確認の連絡をしてなかったらしい。


すると今日の朝林田の親御さんから電話が掛かってきて行方不明って知ったんだ」




先生の声が遠くの方から聞こえる。




「親御さんはずっと友達の家に行ってると思ったらしく、探し始めるのも遅れたそうだ」




先生が誰のことを言っているのか分からない。




「ちょっとでもいい。

何か知っている奴がいたら教えてくれ。


じゃあ、HRを始める」




先程まで深刻に話していたのに、何もなかったようにHRを始める。



あたしはHRが終わって授業が始まっても動くこともできず、ただ黒板が白くなっていくのをみつめていた。




< 40 / 56 >

この作品をシェア

pagetop