妖しがりて寄りてみるに

長い長い電車とバスの旅を終えて
目的の駅に着いたのは午後4時だった。


夕方よりは早いかな?


まだ、空は青くて
蝉がたくさん鳴いている。


回りに見えるのは、山、たんぼ、小川。

まばらな人家と畑。

林…くらいかなぁ〜。


私には、田舎はすごく珍しい。
吹き抜ける風が、心地よく感じる。


なんだ、いいじゃん。
たまにはこう言うのも楽しいかも。


自然を体でめいっぱい感じて、元気になってきた。



回りを見渡していると、一台の車が広めの道からやってきた。


車は私の前で留まると、窓が下ろされて、中から懐かしい感じのおばちゃんが顔を出した。


「あら、日和ちゃん久しぶり。
 みちがえちゃって!
 ここにいなきゃ、きっとわからなかったわぁ〜」
とニコニコしている。


「暑いでしょ。
 乗って、乗って。」



促されるままに、私は車に乗り込んだ。


「あの…よろしくお願いします。」



まだ、この目の前の人が、誰か思い出せないまま、私は挨拶をした。



< 12 / 58 >

この作品をシェア

pagetop