妖しがりて寄りてみるに
出逢い
お風呂から出て、
網戸になっている部屋の窓からはヒグラシの鳴き声が響いている。
まだまだ外は明るいけど、昼の明るさとはまた違って来てる。
【無事に到着したよ。
かなりたんぼと山!
あとから写メ送るね。】
メールを送って一息ついた。
お腹もすいてきた。
さぁ、蓮くんて人のとこに行ってみようかな。
おばちゃんは、私の部屋を出て、廊下の奥って言ってたけど…
いったん部屋を出てみる。
見渡しても、階段らしきものはない。
とりあえず、廊下をすすんでいくことにした。
廊下には窓がなくて、小さい電球が壁に所々張り付いてるだけ。
奥にすすむにつれて、薄暗くひっそりとしている。
人なんているのか、気配すら感じられない。
やっと見つけた階段までの距離が、すごく長く感じた。
階段の向かいにあるのは、やっぱり襖の部屋だった。
でも襖は一枚で、私の部屋のより重く頑丈に見える。
トントン、とノックした。
「………はい」
「あの、今日からこの家にお世話になる、日和です。お邪魔してもいいですか?」
うぅ…なんだか緊張する。
「どうぞ…」
中から聞こえたのは
なんだかとっても心地いい声だった。