妖しがりて寄りてみるに

「散らかっててゴメンね。適当に座ってて」


「あの!蓮くんっ…」

私がそう言いかけると、小さな冷蔵庫からジュースをついでいる蓮くんが

「蓮、でいいよ」


って言った。



「さぁ、どおぞ」


差し出されたのは、冷たい林檎ジュース。


着いてから、何も飲んでなくて、お風呂まで入ってたから、すごくすごく美味しく感じた。



「あの、おばちゃんに、蓮…のごはんを頼まれたの。
 よろしくお願いします!」

呼び捨てすることに、抵抗を感じながら、とりあえず伝えたいことは言えた。


フフッ
と蓮くんの笑い声。

「緊張してるの?」


蓮くんに見つめられて、全然動けなくなる私。


「こんど、髪の毛いじらせてよ。
 得意なんだ。
 ヒヨの髪の毛、柔らかくて気持ちよさそう」


そう言って、私の髪の毛をなぞった。



顔が熱くなる。

なにこれ。


わかんない。
でも怖い。


すごくドキドキする。


篤くんに、触れられるのとは全然違う気持ち。



動けないよ。



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