妖しがりて寄りてみるに

「じゃあ、ヒヨちゃん後ろ向いてよ」


私は、蓮くんに言われるままに後ろを向いた。

私の髪の毛の上を、蓮くんの細い指がなぞる。

それが気持ちよくて、ぞくっとした。


人に髪の毛を触ってもらって、こんな気持ち初めて。

蓮くんの指がすごく気持ちいい。



「ヒヨちゃんは、学校楽しい?」

髪をまとめながら、蓮くんが言った。

「うん、楽しいよ」

私も、だんだん緊張がほぐれてきた。
髪を触ってもらったおかげかもしれない。

「彼氏いるの?」

「うん…」

恥ずかしくなって、小声になってしまう。

「じゃあ、夏休みの間、会えなくて寂しいよね」

「そーなんだ…」

気持ちを見透かされてるみたいで、つい素直に返事をしてしまう。


「ねえ、じゃあさキスしたことある?」




蓮くんの意外な質問に、私は絶句してしまった。


そんなの恥ずかしくて言えないよお。


「ははっ…
 ヒヨちゃんはわかりやすいね。」


すごく可笑しそうに、蓮くんは笑う。


私は恥ずかしくなって、俯いてしまった。

「俯いちゃダメだよ。
 もう終わるからね」


優しく優しく、蓮くんは言う。



やっぱりドキドキする。
なんでだろう。



「できたよ。」

そう言って、鏡を見せてくれた。

肩より少し長いくらいだった私の髪の毛は、すごくキレイにまとめられていて、まるで雑誌から抜け出たみたい。


「うわ〜!ありがとう!」

私は素直に、そう言った。


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