妖しがりて寄りてみるに
「せっかくだから、花火見よう。」
「うん。」
私と蓮くんは、手を繋いで花火を見た。
打ち上がっては消えていく花火。
まるで、蓮くんと私みたいだと思った。
キレイなはずの花火が、すごくさみしく見える。
現実なのに、現実じゃないみたいな蓮くんとの恋。
終わりが来ると思うから、もっと寂しくなるのかな。
だから、たくさん触れたくなるのかな。
私は、蓮くんの手をギュッと握った。
花火が、一気に何発も上がって、空に大輪を咲かせる。
「きっと、今ので終わりだよ。降りようか。」
もっとキスしたい。
もっと触れてほしい。
もっともっと、私を蓮くんのものにして欲しい。
私は、蓮くんの浴衣の袖を引っ張った。
私の精一杯のサイン。
…帰りたくないよ。