妖しがりて寄りてみるに
絶望感
「日和ちゃん、おうちから電話よ〜」
八月も十日程過ぎた晩方。お風呂から出た私におばちゃんが言った。
携帯電話は、篤くんに連絡しないと決めた日から放置してたから、とっくに電源が落ちていた。
だから、おばちゃんちに掛けてきたのだろう。
「はぁ〜い」
私は玄関にある電話に駆け寄っていった。
「もしもし。」
「もしもし?日和ちゃん?元気にしてた?」
電話口からは懐かしいママの声。
これで確信した。
きっと、この電話は私が1番欲しくなかった電話だ。
パパの出張は八月末まで。
パパの田舎と折り合いが悪いママが、わざわざこの家の電話に掛けてくる理由なんて、ただ一つ。
「お家が完成したの。
明日か明後日にでも帰ってきてね」
…やっぱり……
「わかった。」
多分、ママはおばちゃんにも話しただろう。
私が選ぶことのできる選択肢なんて一つしかない。
なんて残酷な結末。