妖しがりて寄りてみるに
私は電話を切ると、すぐに蓮くんの部屋に向かった。
ノックして入る。
「どうしたの?
泣きそうな顔をして。」
蓮くんは、いつもするように優しく私を抱き寄せた。
私が黙っていると、蓮くんが悟ったように言った。
「家に帰ることになったんだね。」
蓮くんの口から聞くと、それがもっと真実味を帯びてきて、悲しくてしょうがなくなった。
蓮くんは、鳴咽を漏らしながら泣く私の頭を、ずっと優しく撫でてくれた。
しょうがない。
死んで別れるわけじゃないし。
また冬休みだって春休みだって、会いに来ればいい。
私は、蓮くんに慰められて、必死に前向きに考えようとしていた。