妖しがりて寄りてみるに
パパの実家。
パパの実家って、めちゃめちゃ遠いじゃん。
…しかも、なんもない田舎じゃん。
「やだよ!
私もママの実家に行く」
「だって、ママの実家はもう部屋がないのよ。
日向ちゃん、一人の部屋がないと困るでしょ?
陽向はまだママと同じ部屋でもいいけど。」
私は、小学3年生の陽向を見た。
満足そうに笑ってる。
そこでパパがやっと口をひらいた。
「日和、ごめんな。
友達との約束もあるだろうけど、今回はパパの実家に行って欲しい。
夏休み全部はかからないから。」
…パパの優しい声を聞くと、なんにも言えなくなる。
夏休み。
花火大会。
プール。
浴衣。
篤くん。
かなり、かなり、か〜な〜り〜、名残惜しいけど…
諦めなきゃダメだよね。
「…わかった。」
私は、明らかに肩を落として部屋に向かった。
篤くんになんて言おう。
部屋から出るとき、追い撃ちをかけるようにママが言った。
「ありがとう、日和ちゃん。
出発は明日の早朝よ」