妖しがりて寄りてみるに
ひとつ
私が出発するときも、蓮君が部屋から出てくることはなかった。
おばさんが笑顔で送りだしてくれる。
また、この家に来ることはきっとできる。
そう自分に言い聞かせる。
こんなにも蓮君が愛してくれた体が愛しい。
孤独に耐えながらひっそりとあの部屋で過ごす蓮君にとって、私が少しでも役に立てたなら、それを喜ぼう。
蓮君の孤独をまぎらわせることができたなら。
帰りの車の中で、何度も何度も蓮君と重ねた夜を思いだす。