妖しがりて寄りてみるに

私は、設計士ねおねーさんがいることも忘れて、力いっぱい戸を閉めた。


とりあえず、篤くんに電話しなきゃ。



プルルルル…
プルルルル…



「はぁい」



いつもの篤くんの声。

嬉しくて、少し涙が出る。



「篤くん、話があるの。
 いまから会える?」



私は心臓をバクバクさせながら、聞いた。



「…ごめん
 今、友達とマック」



そうだよね。
終業式終わったばっかりで、空いてる方がめずらしいよ。


「…わかった。」


私は泣きそうになりながら答えた。



「でも、夕方ならいいよ。
 なんかあったの?元気なくない?また連絡するよ。」



「…うん。」




篤くん。


やっぱり大好き!


やさしいなぁ。



あんなに虚しかった心の中が、一気にあったかくなった。


私って、本当に幸せものかも。



とりあえず、
グタグタ考えててもしょうがない。

出発は明日なんだから、


準備しなきゃ。



あっちでも夏祭りとか、あるよね。


浴衣は着たいし。


パパに聞いてみよう。



…前向きになれたのは、篤くんのおかげだよ。



< 6 / 58 >

この作品をシェア

pagetop