ハルノウタ



「ねぇ、ねぇ、おばあちゃん。きょうはこのお話を読んで。」



「はいよ。《ハルノウタ》かい?これが読み終わったら眠るんだよ。」



「うん、わかった!」



少女はベットに入りながら胸をワクワクさせていた。



老婆はロッキングチェアに座りながら本を広げた。



「ねぇ、ねぇ、これはどんなお話なの?」



「これはね、ある女の子が素敵な男の人といろんな苦難を乗り越えながら家族になるお話だよ。」




老婆は少女の方へ体を傾けながら話を読み始めた。



昔々それは遠い昔──



「昔ってどのくらい?」


「うーん、そうだね。アムールが生まれるよりずっと昔だよ。」



老婆は優しく少女の頭を撫でながら本に目を移した。



「すっごい、昔だね!」


「そうだね。



……それは昔々、アムールが生まれるよりもずっと昔。



森林は風になびかれ木々を揺らし、湖は星の輝きを受けながらキラキラ輝く。ほのかに淡い光を帯ながら太陽が目覚めるのを今か今かと待ちわびる。



そこに列車がゴトゴトと猛スピードで駆けてくる。



オリヴィエ王国専用車。そこに、1人の少女が乗っていた。



悲しみと不安、少しの好奇心を共に乗せて。






それは、わくわくするような物語の始まり。



アムールが眠るまでの間話をしましょうか。
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