恋愛喫茶店 ~罪と一緒にスイーツを~
手の届く距離(ケンイチ)
「だから、大丈夫だって言ってるでしょう!!」
手伝おうとしたら、こんな風に怒鳴られてしまった。
八つ当たりされたとわかっていても、怒りは別にない。
なぜなら、彼女の足が、震えていたから。
必死で自分は1人でできるということをアピールして、だから私には関わらないでほしいと言っているようで。
でも、どうしても届かない。
俺には、さっきから大人のはずの彼女が、届かないものを必死でつかもうとしている子どもに見えてしょうがなかった。
思う。彼女は、ずっと無理して大人になろうとしていたんだって。
見かけも年も大人のはずだけど、彼女はきっと、子どものままだ。
これ以上そんな彼女を見ていたくなくて、一歩、近付く。
後で何を言われても、嫌われてしまってもかまわない。
彼女の体がよろける前に、みりんを取った。