食人姫
「もう、由奈も哲っちゃんも変な事言わないで。せっかく皆集まるんだから、昔みたいに楽しくお喋りしよ?ね?」


麻里絵にそう言われると、二人ももうそれ以上は言えない。


そんな関係性がこの谷では築かれているのだろう。


昔は俺もこの輪の中にいたのに、何だか少し離れていただけで俺がいない輪が出来てしまったんじゃないかと不安になった。


「まあ、麻里絵が言うなら俺は構わないんだぜ?でもよ、お前らがここに来るのなんて珍しくね?」


フウっと煙を吹き出し、タバコの先端で由奈と麻里絵を交互に指して、フンッと笑って見せた。


「ふふふ、後で皆が来たら教えてあげるけどね、重大な発表があるんだよね」


さっきとは打って変わって、満面の笑みを浮かべた由奈が、哲也の勉強机……と言う名の物置きの近くにある椅子に座って、嬉しそうに話した。


重大な発表って何だろう?


由奈に彼氏が出来たとか?


「なんだよそれ。男みたいなお前と付き合ってくれる男でも現れたか?」














……まずい。


哲也と同レベルの考えだぞ。


「ちょっと殴って良い?もう、大輔君!この馬鹿になんか言ってやってよ!」
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