食人姫
「今知らなかったら……何か都合が悪い事でもあるんかい?ほれ、言うてみい」


爺ちゃんの顔は笑ってる……けど、声と目は笑っていない。


今すぐにでも手にした銃で撃てるぞと脅しているようで、これ以上は言ってはいけないと判断した。


「今知らなきゃ……また33年待つ事になるから。今のうちから知っておいた方が、33年後にすぐに動けるんじゃないかなと思って」


取って付けたような言い訳だけど、それが逆に俺達が言いそうな事だ。


狙ってか、そうでないのかは分からないけど、直人の言葉は爺ちゃんを悩ませるには十分なものだった。


「うん?そうか?じゃが、それはお前らの親父にしっかり教えるから心配せんでええ。ほれ、化け物に食われんうちに家に戻れ。早よう寝て、明日に備えるんじゃ」


……結局、何を言っても儀式の事は教えてくれないんだな。


これ以上聞くと、間違いなく怪しまれる。


哲也もそう感じたのだろう。


ボリボリと右手で頭を掻いて、はぁっとため息を吐くと、俺達の顔を見た。


「しゃーねえな。戻ろうぜ。爺ちゃん頑固だからよ、教えてくれねえって言ったら、本当に教えてくれねえぜ」


「頑固は余計じゃい!さっさと帰れ!」


哲也の一言で爺ちゃんは怒ったけど、それが逆に俺達を助けてくれたような気がした。
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