食人姫
「……少しだけ分かったな」


部屋に戻った俺達は、皆に集会所で聞いた事を話していた。


「儀式は明日始まるけど、明後日の夜までは巫女は食われずに済むって事だね。何とかするならその間しかないね」


「だけど、結局何が行われるかは分からないままだからね。手の打ちようがないよ」


光が出した結論を、直人が否定する。


「絶対に何か手はあるはずだ!」と言いたい所だけど……残念ながら俺ではその手が思い付かない。


誰かを身代わりに……なんてしたら、麻里絵の代わりに誰かが食われるだけ。


どういう基準で巫女を選んでいるかは分からないけど、それこそ無駄死にになるかもしれない。


33年に一度の大切な儀式だ。


きっと何か、特別な基準があって麻里絵が選ばれたのだろうから。


「こうなったら大輔君、麻里絵と逃げちゃう?この谷からさ。夜に出歩かなければ良いだけだしさ、なんとかなるかもよ?」


由奈が、極論とも言える提案をしたけど、それは無理な話だ。


「僕は儀式をすべきだって言ってるんだよ?そんな事、本当にさせると思ってるのかい?いや、仮にそれが出来たとして、大輔は今年17歳で、麻里絵は16歳。どうやって生きていくんだ?」
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