食人姫
儀式なんて話から、急に現実的な話になったな……。


確かにそう言われれば、学生寮に入っている俺に、麻里絵と二人で生活が出来るかという質問には、そう簡単にイエスとは答えられない。


自分の事でさえろくに出来ないのに、誰かと一緒だなんて。


「……直人と源太の前で話す内容じゃねえな。隣の部屋に布団敷いて来るからよ、話はその後だ」


そう言って哲也は立ち上がり、部屋を出て行った。


「……僕達は邪魔ってわけだね。まあ当然か。麻里絵を助けて儀式をしなくても化け物を鎮められるなら手伝うけど、そうじゃないのなら、僕はこれ以上は協力しないからね」


この谷で一緒に育って、中学卒業まで毎日遊んだ友達も、儀式一つで心が離れ離れになってしまった。


谷の人達が分裂した事を考えると、そうなってもおかしくはないのだろうけど……。


「協力はしなくていいけど、これ以上邪魔はしないでね」


ニコッと、直人に笑いかける光。


それから逃げるかのように、直人は顔をそらした。


これは……邪魔をしないと受け取っても良いのかな。


まあ、本気で邪魔をするはずなら、爺ちゃんに本当の事を言っていたはずだし。


何にしても、人数が少なくなれば、出来る事も少なくなって行くというのは厳しかった。
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