食人姫
闇に紛れて
「俺、麻里絵の所に行って来る」


そう言った俺に、哲也と光は驚いたような表情を向けた。


まさかこんな時間に、化け物がいる外に出るなんて考えもしなかったのだろう。


だけど、哲也は膝をバンッと叩いて、「よっしゃ」と呟いて立ち上がった。


「光、お前は由奈といてやれ。一人だと分かったら、隣の童貞共が由奈を襲うかもしれねぇからな」


「そ、その心配はないと思うけど……外は危ないよ。化け物に食われちゃうかもしれないんだよ?」


光の言う通りだ。


もしかしたら、麻里絵の家に辿り着く前に食われてしまうかもしれない。


だけど、集会所に集まった人達を襲った化け物を見た時、もしかしてと思う事はあったから。


「上手くやるさ。それと、この指とノートは持って行くぞ。直人と源太は儀式に賛成してるからな。これをこっそり奪いに来ないとも限らないから」


友達を疑うなんて、嫌な気分だ。


いつもならこんな事は言わなかった、儀式さえなければ、皆一緒に雑魚寝でもしていただろうに。


「話してても仕方ねえ、さっさと行って、戻るぞ」


俺が言い出した事なのに、いつの間にか仕切っている哲也に頷いて、俺達は部屋を出た。
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