食人姫
塀を乗り越え、2.5メートル程下のあぜ道に着地した俺と哲也。


衝撃が全身に伝わって、崩れるように倒れてしまったけど……哲也は屈んだままの体勢をキープしている。


流石だな……俺なんて野球部でしごかれてるのにこのザマだってのにさ。


「くぅぅぅぅ……股が……つった」


そう言いながら苦しそうに股間を叩いていた。


……そうでもなかったか。


まあ、それはそうとして。


ここからどうする?


こっち側に化け物は移動していないけれど、このあぜ道は麻里絵の家の方には延びていない。


道路か、神社の方側か、その二つしかないのだ。


「……一旦道路は避けて、ぐるっと迂回するか?食われるよりマシだろ」


「まあ、そうだけどさ。でも、この道は見通しが良すぎるよな」


化け物は一つの場所でジッとしているわけじゃない。


うろうろと谷の中を移動して、俺達のような、儀式をしていない人間を探しているに違いない。


そうなると、隠れる場所がない道を選ぶのは自殺行為に思える。


「じゃあ一か八か最短ルートで行くか?化け物に見付からなきゃ良いんだろ?」


となると道路か。


こんな話をしている間に、化け物が移動してくれてたら良いんだけど……と、考えていた時。














田んぼの真ん中に……黒い人影がある事に気付いてしまった。
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