食人姫
それからさらに数時間。


ただひたすら歩き続けていた俺達に、疲労と眠気が襲って来た。


休憩しようとも思ったけど、休めば眠ってしまいそう。


「大丈夫か?疲れてないか?」


「大丈夫。大輔君こそ疲れてるんじゃない?」


「俺は……平気だよ」


本当は平気じゃないけど、麻里絵に弱い所を見せたくないと、変な意地を張る。


しかし……本当にあとどれくらい歩けば街に着けるんだよ。


今、三時間ちょっと歩いてるとして……13キロほどか?


朝になっても着きそうにないな、これは。


「大輔君、何あれ?」


そんな事を考えていた時、麻里絵が手をギュッと握り、前方を指差したのだ。


何あれって……この道に、気になるような物なんてなかったはずだけど。


そう思って前方にペンライトの光を向けると……そこにあったのは、道を塞ぐフェンス。


いつもは開いているそれが、なぜ今になって閉じているのだろうか。


フェンスの上には有刺鉄線が張られていて、俺一人ならともかく、麻里絵がいると厳しい。


よりによってホットパンツだし、肌の露出が多いから、ケガをしてしまう可能性がある。


死ぬ事よりはマシかもしれないけど、化け物の事もあるから、躊躇してしまう。
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