食人姫
「何だよこれ……何もこんな時に閉まってなくてもさ」


金網のフェンスに近付き、軽く揺すってみるけど、鎖が巻き付けられていて、南京錠で施錠されている。


かなり頑丈な錠前は、俺が何をしたところで破れそうじゃないな。


だったらどうする?


ここを通れないからって、谷に引き返すのか?


「ど、どうするの?これじゃあ進めないよ」


不安そうな麻里絵の手をギュッと握るけど、俺にはこの状況を打開出来る手段がない。


呆然と、フェンスの前に立ち尽くして十数分。


フェンスの向こう、道の奥から二つの光が近付いて来た。


自動車だろうか?


ここが通行止めになっているとは知らないんだろうな。


でも、何とか助けを求める事が出来れば、ここから抜け出せるかもしれない。


「おーい!誰か!助けてくれ!」


ただ、ここを抜けたい一心で、俺は必死に手を振った。


頼む、俺に気付いてくれと。


徐々に光が大きくなって来る。


そして、眩しくて光を腕で遮らなければならないほどに近付いて。


ドアを開けて、二人……誰かが降りて来た。


その二人が、俺達の方に近付いて来たのだ。
< 224 / 272 >

この作品をシェア

pagetop