食人姫






カチャン。






警察官が持っていた鍵で南京錠が外れ、鎖が地面に落ちる。


俺達の行く手を阻んでいたフェンスは、あっけなく開いて、俺達は警察官に連れられてパトカーに乗り込んだ。


「良かったな、麻里絵。これで街に行けるぞ」


隣に座った麻里絵の頭を撫で、不安にさせないように精一杯の笑顔を向ける。


この時の俺の顔は、きっと引きつっていてとても見られたものじゃなかっただろう。


「うん……でも、私達だけ逃げて、本当に良かったのかな?」


ジッと俺を見詰める麻里絵に、俺は小さく頷いた。


哲也が死に、儀式に反対した人が死に、光はまだ神社にいる。


これだけの犠牲を払ったんだ。


麻里絵が死んでしまえば、この犠牲が本当に無意味なものになってしまう。


自分勝手と言われようとも、俺は麻里絵を守ると決めたから。


「じゃあキミ達。とりあえず街まで送って行くから、それまでは休んでいなさい。長時間歩いて疲れてるだろうからね」


運転席に乗り、ドアを閉めた警察官が、俺達に笑顔を向けてくれる。


その笑顔を見て、安心した俺達は、お互いに手を握って目を閉じた。


疲れと眠気に引きずり込まれるように……俺達は眠った。
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