食人姫
警護二人に連れられて、巫女の装束を剥がれた光が、本殿から出て来たのだ。
暴れるでもなく、ただ己の運命に従うかのように。
「巫女様になりすまして、儀式の間に何時間もいたのはな、歴代の巫女様に対する冒涜だ。巫女様を連れ出す事は大した事じゃない。33年前……俺も実香を連れ出そうとしたからな」
寂しそうにそう呟いて、本殿から出た光から目をそらした。
親父さんが、小谷実香を助けようとした。
死ぬ覚悟で、今の俺と同じ事をしようとしたんだ。
だけど、小谷実香は巫女になり死んだ。
つまり親父さん達も逃げる事が出来ずに、運命に抗えなかったということだ。
「光……」
焦点が定まらない目で、石段を下りてきた光を見る。
「見るな。お前にとっては良いもんじゃねえ」
親父さんがそう言ったけど、俺は目をそらす事が出来なかった。
一体何が起ころうとしているのか、何をしようとしているのか。
哲也が撃たれた広場、参道を避けるように砂利の上に移動させられた光は、そこにひざまずかされたのだ。
そして、光がこちらに顔を向ける。
恐怖はないのか、ニコッと笑った顔に焦点が合った次の瞬間。
警護の一人が振り下ろした刀が……光の笑顔を首ごと斬り落としたのだ。
暴れるでもなく、ただ己の運命に従うかのように。
「巫女様になりすまして、儀式の間に何時間もいたのはな、歴代の巫女様に対する冒涜だ。巫女様を連れ出す事は大した事じゃない。33年前……俺も実香を連れ出そうとしたからな」
寂しそうにそう呟いて、本殿から出た光から目をそらした。
親父さんが、小谷実香を助けようとした。
死ぬ覚悟で、今の俺と同じ事をしようとしたんだ。
だけど、小谷実香は巫女になり死んだ。
つまり親父さん達も逃げる事が出来ずに、運命に抗えなかったということだ。
「光……」
焦点が定まらない目で、石段を下りてきた光を見る。
「見るな。お前にとっては良いもんじゃねえ」
親父さんがそう言ったけど、俺は目をそらす事が出来なかった。
一体何が起ころうとしているのか、何をしようとしているのか。
哲也が撃たれた広場、参道を避けるように砂利の上に移動させられた光は、そこにひざまずかされたのだ。
そして、光がこちらに顔を向ける。
恐怖はないのか、ニコッと笑った顔に焦点が合った次の瞬間。
警護の一人が振り下ろした刀が……光の笑顔を首ごと斬り落としたのだ。