食人姫
指とノートを見つけた時、蔵の中にいた女の子……小谷実香と思われる幽霊。


それが、俺に近付いて顔を見上げる。


幽霊を前にしてるってのに、不思議と恐怖はなかった。


どちらかと言えば、哲也を容赦なく撃ち殺した爺ちゃんや、光の首を斬り落とした大人達の方が怖い。


もう、血の通った人間がする事ではないとさえ思えてしまう。


そう考えている中で……小谷実香の口から飛び出した言葉は、俺に衝撃を与えた。














「この谷の人達は、誤解に誤解を重ねて、おぞましい儀式なんてものを作り上げてしまったの。呪い師の怨念なんて……そんな物はなかった」

















な、何を言ってるんだ?


呪い師の怨念はなかった?


いや、だとしたら、俺の周囲を取り囲んでいる化け物達は何だって言うんだよ。


谷の人間を食い殺す化け物がいるだぞ?


儀式をしなきゃ、化け物を鎮められないんだぞ?


小谷実香、あんただって化け物を鎮める為に、33年前に巫女として生け贄になったんじゃないのかよ。






「私もそうなんだと思ってた。谷の人達が助かるなら良いと思ってた。生まれてくる子供達を……あなた達を守れるなら良いとおもってたけど……」





そこまで言って、小谷実香の表情に変化が現れ始めた。
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