食人姫
石段を一つ一つ上り、ゆっくりと本殿に近付いて行く。


闇の中に浮かんでいた神社の本殿が、かがり火に照らされて赤く染まっている。


警護達は神社を取り囲む、物々しい雰囲気の中、俺は二人に連れられて、あの部屋に……儀式の間に通された。


部屋の中には、夢で見た通り、麻里絵が座っていて、その傍には白い装束を着た人が……哲也の爺ちゃんが帯刀して立っていたのだ。


これから麻里絵は化け物に食われる。


そして、化け物は……巫女達は、また33年間眠りに就くのだろう。


だけど、それは巫女達が望んでいる事ではない。


この時、俺の頭の中には、おぼろげながらその答えが見えていた。


それが正しい事かは分からない。


哲也の親父さんが、結局儀式賛成派になったように、俺もそうなるのかもしれなかったから。





「来たか……それでは始めるかのう。えーと、何を言えば良いか忘れたわい。まあ、適当でいいじゃろ。『この地を染めし呪いを、巫女の血肉をもって浄化する。生け贄の巫女よ、再びこの地に安息をもたらしたまえ』」


そう言い、爺ちゃんは麻里絵をこちらに向けて座らせた。


顔を上げた麻里絵と、俺の目が合い、麻里絵は優しく微笑んだのだ。
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