食人姫
どうしてこんな時に笑ってられる。


人に笑顔を向けられるんだ。


化け物に食われてしまうんだぞ?


死んでしまうんだぞ?


麻里絵はそれで良いのか?


本当にそれで良いのか?













「麻里絵!俺と生きろ!!」













喉が潰れても構わない。


そんな思いで声を出して、父さん達の手を振り切って俺は駆け出した。


正座してこちらに微笑みかける麻里絵に手を伸ばし、必死に駆け寄る。


まるでスローモーションのように、世界の動きがゆっくりに見えて。


一歩一歩、転ばないように、足に力を込めて近付いて行く。


そんな中、笑顔の麻里絵の口が動いた。


何を言っているのか、声は聞き取れないが、口の動きからその言葉が何なのかは分かった。



















ごめんね。





















麻里絵の目から涙が零れ落ちる。


俺が近くにいれば、麻里絵は化け物に食われない。


そう思って駆け寄ったけれど……。


















「きええええええっ!!」
















突然響いた爺ちゃんの奇声。


次の瞬間……。















刀が抜かれ、刃が麻里絵の首を通り過ぎたのだ。
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