食人姫
「え?」
麻里絵の首に、横に一本赤い筋が走る。
何が起こったのか……麻里絵は微動だにせず、俺を見つめたまま。
嘘だろ?
麻里絵は、巫女として化け物に食われるんじゃないのか?
歴代の巫女達は、そうやって化け物達を鎮めて来たんじゃないのか?
目の前で起こった事が何なのか、全く理解出来ない。
だけど……。
グラリと麻里絵の頭部が揺れ、俺の方に落下するのを見て……麻里絵は、人の手によって殺されたのだという事を理解した。
「あ、あ、ああああああああああっ!!」
喉が潰れるほどの声を上げて、俺は床に倒れ込んだ。
なんで、なんで爺ちゃんが麻里絵を殺したんだ!
儀式って一体何なんだよ!
「苦しまずに逝けたようじゃな。これで良い……坊主、見ておけ。これがこの谷で生きるという事じゃ」
少し悲しそうな表情を浮かべて……麻里絵の首があった場所から噴き出す血を浴びながら、爺ちゃんは俺にそう言った。
「麻里絵が死ななくても……谷を守る方法はあったんだよ!哲也も光も、死ななくて良かったんだ!」
もしかすると、指の存在を言ってさえいれば、誰も死ななかったんじゃないかと、この時初めて俺は後悔した。