食人姫
「なんじゃ!そこを退けぃ!」


「親父、もう良いだろ。儀式が済めば、こいつはもう化け物に襲われないんだ。今、化け物に襲われない力があったとしても、意味がなくなるんだから」


俺をかばうようにして、爺ちゃんの前に立ちはだかったのは……哲也の親父さんだった。


ジッと、親父さんと爺ちゃんの睨み合いが続く。


その隙に、少しでも離れようと後退した俺を見て、爺ちゃんがチッと舌打ちをした。


「ふん、まあええわい。じゃったら、このガキから始めるとするかのう」


「……そうしてください」


二人で何を言っているのか。


俺から始めるとは、一体何の事だ?


何が何だかわからないまま、目の前の親父さんと爺ちゃんの動きを警戒する。


これで終わりじゃないのか?


まだ何か、やろうとしているのか?


訳がわからない俺を、親父さんがその場に座らせるように強引に身体を起こす。


首に腕を回し、逃げられないように押さえ付けて。


息が出来るから、窒息させるつもりではないようだ。


「ここからが儀式じゃ。ぬるい現実しかみとらんその目で、しっかり見るが良いわ!」


ニタリと笑った爺ちゃんが、俺を見た次の瞬間。
















その手に握られていた刀が、首のない麻里絵の身体を切り裂いたのだ。
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