食人姫
どうして心臓を……死んだ麻里絵の身体を切り刻んだのか、全く理解できない。


いや、理解したくなかっただけかもしれない。












「なんじゃ?おお、そうか。これでは大き過ぎるというわけじゃな。どれ、少し小さくしてやるか」









そう言い、手の上の心臓に刀を当てて、器用に切り始める。


2センチ四方くらいの小さな肉片を作り出し、刀を鞘に納めた後、それをつまんで俺に突き付けたのだ。











「ほれ、食え!」













い、嫌だ!


と、必死に出ない声を出そうとして、首を横に振る。


それでも爺ちゃんは、おかまいなしに俺の口に肉片を押し当てて食わせようとする。


永遠に続くかと思われたその攻防も、時間にしておよそ10秒。


親父さんが俺の頬を、指でグッと押して、無理矢理口を開かせると、爺ちゃんはすぐさまその中に肉片を放り込んだのだ。


口の中に、生暖かい麻里絵の心臓の温もりを感じる。


吐き出そうとするけど、親父さんが口を塞いで吐き出させてくれない。


「なんじゃい。せっかくの巫女様の心臓じゃぞ。喜んで食わんかい」


蔑むような目で、俺を見下ろした爺ちゃんは、手に持っていた麻里絵の心臓にかぶりついた。
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