食人姫
「ほら、さっさと飲み込め!」


親父さんに口を塞がれたまま、揺すられ、喉を突かれ、ついに……。












ゴクンと、俺は麻里絵の心臓の肉片を飲み込んでしまったのだ。


「うっ!!おええええっ!!」


「飲み込んだようじゃな。では、各家に配る肉を切り分けるとするかの。わしはこの為に33年待ったようなもんじゃからのう。やはり神聖な巫女様の肉は一味違うわい」


爺ちゃんがそう言い、再び麻里絵の遺体に近付くと、嬉しそうな表情を浮かべて刀で解体を始めた。


斬り落とされる腕、足。


取り出される内臓を目の当たりにして、とてもじゃないけどこんな所にいたくないと、俺は這って部屋の入り口に向かった。


「やはり心臓も良いが、肝臓が……」


背後で聞こえる爺ちゃんの呟きが、悪魔の声に聞こえる。


部屋から出て、逃げるように飛び出した本殿。


震える足で石段を下りて、俺が縛られていた木まで何とか辿り着いた。


口に指を突っ込んで、飲み込んでしまった肉片を吐き出そうとして。


何度目かの嘔吐で、ようやくそれが胃の中から出て来たのだ。


「ハァ……ハァ……」


これは……何が起こってるんだ。


儀式とは一体何なんだ?


吐き出された肉片を見詰めて、俺は必死に考えた。
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