食人姫
何がどうなっているんだ。


儀式の賛成派は、谷の子供を守る為……だけに儀式をしようとしているわけではないと感じていたけど、まさかこんな事を。


人肉食い。


少なくとも爺ちゃんは、それを楽しみにしているように見えた。


神聖な巫女の肉を食う為に、それを邪魔しようとする者は、孫であろうと殺すというわけか。


これじゃあ、どっちが化け物か分からないじゃないか。


人を食う化け物から守る為に、儀式をしたいんじゃなかったのかよ。


結局、俺は麻里絵を助ける事が出来なかった。


最後の最後まで、賛成派の意図に気付かずに、化け物に食われない方法を見付けたから大丈夫なんて、無意味な安心感に浸っていただけだったんだ。


最初から、賛成派は麻里絵を食う為に巫女に仕立て上げたんだ!














「そう、私達は皆、この谷の人達に食われたの」














悔しがる俺の耳に、実香の声が聞こえた。


ゆっくりと顔を上げると、先程と同じように、歴代の巫女の幽霊を引き連れて。


「私達は、巫女の肉を取り入れた人を襲えない。この負の連鎖を止めるには、谷の子供達を食うしかなかったの」


実香のその言葉で、俺はやっと一つの答えに辿り着いた気がする。
< 249 / 272 >

この作品をシェア

pagetop