食人姫
あれから、どうやって家に戻ったのか分からない。


気付けばベッドに横になっていたし、気付けば眠っていた。


夢の中でも、麻里絵は爺ちゃんに首を刎ねられ、内臓を引きずり出されて、俺は麻里絵の心臓を食わされる。


化け物達が歴代の巫女の姿に戻り、俺に教えてくれたこの谷の血塗られた歴史。


呪い師の呪いなんて存在しなかった。


繰り返されていた惨劇で生まれた怨念が形となり、脈々と受け継がれる血の呪いとなって存在しただけ。


呪い師の力を恐れた谷の人達が、その恐怖から逃れる為に作り出したイカれた儀式だったのだ。


いや……もしかすると、哲也の爺ちゃんのように、いつの間にか巫女の肉を食う事が目的になっていったのかもしれないな。


爺ちゃんの姿は……儀式を済ませて谷の安全を守るというよりも、肉を食べたかったという風にしか見えなかったから。


つまり、この谷の儀式はいつからか、谷の子供達を守るという本来の目的が失われ、肉を食う為だけの物へと変わって行ったのだろう。


もちろん、巫女の肉を食えば化け物に襲われる事はないし、全く意味がないというわけではないのだけど。
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