食人姫

勝浩を、哲也を、光を、そして麻里絵を失った最悪の数日。


疲労で随分長い間眠っていた俺が、目を開くと外は真っ暗。


明かりのない部屋の中も暗く、俺の心の中のようだ。
















「大輔君、やっと起きた」
















そんな暗闇の中で、俺の名を呼ぶ声が聞こえる。


まだ夢の中だったのかと、特に気にもしないで「ああ」と小さく呟いた。


あれは……夢だったのか？


ここ数日の事は全部夢で、俺はこの谷に戻って来て、一日も経っていないんじゃないのかと、そんな都合の良い事を考えている。


だけど……。

















「ねえ大輔君、お兄ちゃんが帰って来てないの。哲ちゃんもいなくて……何か知らない？」















その声に、俺はこれが夢なんかじゃないと、そこでやっと理解した。



慌ててその声の方を向くと、ベッドの横に由奈が座っていて、暗い中で俺を見ているのがわかる。


「……由奈。お前、何も知らないのか？」


「大輔君は何か知ってるんでしょ？お願い、何があったのか教えて。どうして昨日、私を連れて行ってくれなかったのか、教えてよ」