食人姫
どこから話せば良いのか……。


麻里絵を助けに行った三人の中で、俺だけが助かってしまい、皆殺された。


「由奈は……肉を食べたか?」


あまり、その答えを聞きたくはない。


爺ちゃんが麻里絵の肉を解体して、どうなったのかを知りたくないという思いがあったから。


「え?肉?食べてないよ。朝からずっと大輔君が起きるのを待ってたからさ、ご飯食べてないんだ」


それを聞いて、少し安心した。


もしも、由奈が麻里絵の肉を口にしていたら、その肉の正体を知った時にどう思うだろう。


谷の大人にしてみれば、それは儀式の流れで当たり前なのかもしれない。


だけど、俺達にしてみれば、大切な友人の肉を食わされるという事だ。


この村の皆が、麻里絵の肉を食うという事なのだ。


「そうか、それなら良い。哲也と光がどこにいるか知りたいって言ってたな。あの二人は……」


儀式が終わって、麻里絵が死んだという事は、由奈も理解しているだろう。


だけど、あの二人の事は知らない。


これを言っても良いのかどうなのか分からずに、そこまで言って言うのを止めた。


部屋の照明を点け、ベッドに腰を下ろした俺は、由奈の顔を見て悩んでいた。
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