食人姫
哲也の家の前を通り過ぎ、神社へと向かう。


集会所では、儀式が終わって集まりが開かれてるのか、外まで声が聞こえるほど騒いでいるのが分かる。


母さんも家にいなかったようだし、ここに来ているのだろう。


どこの民家を見ても明かりは点いていない。


きっと、谷の人全てがここに集まっているに違いないな。


「皆、何も知らずに集まってる。直人や源太なんかも、哲也達がどうなったかも知らずに」


恨みを言葉に込めて、ボソボソと呟く。


由奈に聞こえたかどうかは分からないけれど、どっちだって良い。


俺からしてみれば、谷の大人達は悪だ。


儀式を行って、麻里絵だけじゃなく、歴代の巫女の肉を食ってきた。


それを知れたのは偶然だけど、知ろうとしなかったやつら、知ってて止めようとしなかったやつらも同じく悪。


ただ、由奈は……俺が連れて行かなかっただけで、恨むのは筋違いな気がする。


手を繋いだまま神社の前までやって来た。


もうそこに警護はいない。


少し長い石段があり、ゆっくりとそれを上がっている時、上の方から一人の警護が下りて来たのだ。
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