食人姫
その火を地面に近付けると、火は灯油に燃え移り、一気に広がって行く。


それほど高くない火が、集会所の周りを囲むが、やはり建物が燃えるほどではない。


これを、実香は望んでいたのか?


こんなんじゃ、中の人達が異変を感じたらすぐに避難してしまう。


そう……思った時だった。


「私達に任せて」


実香はそう言って、フッと闇に消えたのだ。


「任せてって言われても……」


ここから何が起こるか……不安になりながら燃える火を見詰めていた時。


「大輔君、あれ」


空を指差して由奈が声を上げた。


その方向を見てみると、化け物達が集会所の上空を旋回している。


グルグルと、物凄い勢いで回り出して、それが風を巻き起こす。


もう、肌にも感じるほどの風。


それが炎を引き上げるように、火柱が激しく上がり始めたのだ。


「由奈!下がれ!危ないぞ!」


あまりに急激な炎の変化に、戸惑いながらも後退りする。


地面は砂利なのに、こんなに炎が上がるなんて。


何か……特別力によって引き上げられているとさえ感じた。


実香が、私達に任せてと言ったのはこの事だと。


炎は、集会所を飲み込むほどの高さになり、螺旋状に渦を巻いていた。
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