食人姫
いつの間にか俺の隣に座っていた、メガネのサラサラヘアー男が言った、哲也という名前は知っている。


いや、それよりも……。


「直人!お前全然変わってないな!見ただけで分かったぞ!」


自分で「随分変わった」と言っている所悪いけど、直人が変わっていないからすぐに分かった。


「じゃあ、お前はあの哲也?マジか!俺はてっきり頭の悪いヤンキーに絡まれたとばかり思ってた!」


「まあ、頭がわりぃのは否定しねえけどよ、それよりお前、連絡ぐらいよこせよな」


中学生の時は丸刈りで俺と同じくらいの背だった哲也が、こんなにいかつくなっているなんて知らなかった。


「悪かったよ。でも、たまに帰っても大体皆いないだろ?なんの儀式があるか知らないけどさ、二人に会えただけでも帰って良かったかな」


「ああ、それな。どうやら俺達だけじゃないみたいだぜ?谷出身の人間が皆戻ってくるって親父が言ってたわ」


哲也の話を聞いて、そんなに大勢で行う祭りがあったのかと、この時はそんな風にしか思っていなかった。


つまり、谷に帰れば昔遊んだ皆に会える……程度にしか。


だから俺は、久し振りに谷に戻るのが楽しみになっていた。
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