食人姫
「ねえ、どうしてお兄ちゃんは私が知らない事を知ってるの?兄妹なのに、私が教えてもらってないって不公平じゃない?」


正座をして、少しずつ料理を口に運ぶ光とは対照的に、あぐらをかいて、ガツガツと掻き込むように食べている由奈が尋ねる。


いや、そう思っているのは由奈だけじゃない。


俺や哲也、源太達も知らない事を、光は知っている。


もしかすると、麻里絵や未来達も知っているんじゃないかと、昨日の反応から疑ってしまう。


「ご飯を食べながらする話じゃないけど……聞きたい?儀式は明日だから、そろそろ知っても問題はないと思うんだけど」


「もったいぶらずに教えてよ。私達、化け物に食われそうになったんだよ?知る権利があると思うな」


誰よりも早く食事を済ませた由奈が、茶碗をテーブルに置いて尋ねる。


メシ食うの早いっての。


俺でもまだ終わってないのに。


「小さい頃、お爺ちゃんから聞いていたんだ。33年に一度の儀式、その前後にだけ現れる化け物の話をね」


儀式の前後に現れる化け物か……。


だけど、知っているのはそれだけじゃないはずだ。


今ここで問い詰めるのは簡単だけど、由奈がいる。


昨日、哲也が聞いたという言葉の意味を考えると、由奈には聞かせたくなかった。
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