食人姫
「僕のお爺ちゃんが教えてくれた話だけど、1000年前から、谷に降り掛かる不幸を止める為に、33年に一度儀式を行うらしいよ。その儀式がどんな内容なのかは教えてもらえなかったし、不幸が何かは分からないけど……本当に出たからね、化け物が」


その不幸が人を食う化け物だとして、光の言うように実際にそれは現れた。


憎い……この地の者が……。


あの化け物が言った言葉が思い出される。


「1000年前か。何があったか分からないけど、確めようがないな、そんな話は」


「うん……だけど、その時何があったかを教えられている人はいるはずだよ。そうじゃないと、儀式そのものが忘れられてしまいかねないから」


だとしたら、父さんも何かしら知っているかもしれないな。


……いや、そうじゃないだろ。


別に俺は1000年前に何があったかなんて知りたいわけじゃない。


巫女に選ばれた人は、儀式が終わるとどうなるのかが知りたいんだ。


「光、巫女は儀式が終わったらどうなる?哲也が聞いたんだ、『麻里絵は死ぬ』ってな。それはどういう意味なんだよ」


道の真ん中で立ち止まり、後ろにいる光の顔を見てそう尋ねると……言いにくそうに、小さく口を開いた。










「……死ぬ……みたいだね」




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