食人姫
光に話を聞いて、俺は自宅に戻りシャワーを浴びていた。


聞きたい事が聞けてスッキリした……なんて思えるはずがなく、去来する不安に、俺の胸は締め付けられる。


どうして誰も言ってくれなかった。


言ったところで何も変わらないとは思うけど、知らなかったとはいえ、俺は麻里絵に何て言った!?


死ぬ事が、麻里絵なら出来る?


何て事を言ったんだよ……。


光も未来も夏美も、麻里絵が死ぬ事を知っていた。


だからあの時、喜ばずにうつむいていたんだ。


何も知らなかったやつだけが、凄い凄いと騒ぎ立てて、バカみたいにはしゃいでいた。


やり場のない怒りを、風呂場の壁に打ち付けるようにして拳で殴る。


頭からシャワーを浴びたまま、どうすれば良いか分からないで、ただ立ち尽くして。


「大輔、あのさ……この事、皆に話さない?家の人にもう聞いてるかもしれないけど、皆知っておくべきだと思うんだ。ごめんね、黙ってて」


「……言ってどうするんだよ。麻里絵が死ぬから、皆悲しもうとでも言うのか?そうじゃないだろ!1000年も続いてる儀式で、人を食う化け物まで出た!一体どうすれば良いんだよ!」


色んな事が頭の中でぐちゃぐちゃに暴れている。


自分でも何を言っているのかすら分からなかった。
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