食人姫
あれは……麻里絵の爺ちゃんか?


さしずめ、孫が普段しないおめかしをして家を出たから、怪しいと思って様子を見に来たって所だろう。


「大輔君、ひ、久し振り」


由奈に押されて前に出た麻里絵が、戸惑っているような表情を浮かべてそう呟いた。


中学卒業以来会っていないから、話しにくいのは分かるけどさ、そんな顔をされると俺も何だか話しにくいじゃないか。


「あ、うん。元気だったか?」


まさかいきなり会えると思っていなかったから、俺も何を話して良いのかさっぱり分からない。


こんな事なら、バスの中で会話をシミュレーションしておくんだった。


「うん……」


お互いに照れてしまって、話が続かない。


そんな煮え切らない俺達を見ていてイライラしたのか、麻里絵の背後にいた由奈が怒ったような表情で俺を睨み付けた。


「大輔君さあ、久し振りに会ったのにそれだけ!?麻里絵はねえ、大輔君が卒業してからずっと……」


「ゆ、由奈!変な事言わなくても良いよ!ごめんね大輔君。気にしないで」


由奈は……俺より年下なのにグイグイ来るから苦手だ。


そんな由奈から俺を守ってくれる友達はというと……もう、随分先を歩いていて、助けてくれそうになかった。
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