食人姫
「だから!僕は勝浩を呼びに家まで行ったんだよ!!その時にはもういなかったのに、どうして僕のせいになるんだよ!」


勝浩の死はお前の責任だ。


確かに哲也の言い方だとそう受け取られても仕方がない。


直人が悪いわけじゃないのは哲也も分かっているだろう。


だけど、人を食う化け物を見たわけでも、勝浩が食われる現場を見たわけでもない哲也には、それをすぐには納得出来ないのか。


「そ、そうだな……すまねぇ」


それでも、握り締めた拳を緩めて、小さくそう呟いた。


「哲也の早とちりはいつもの事だけどね、僕のせいで勝浩が食われたなんて酷い言いがかりだぞ!!」


いつも温厚な直人が怒るのも無理はない。


いくら兄弟同然に育っているからと言っても、人を殺したみたいな言い方をされたんだから。


「とりあえず哲也はシャワーでも浴びてこい。埃まみれなんだからな、俺達」


「あ、ああ。そうするわ」


混乱している様子の哲也を部屋から出し、階段を下りたのを確認した俺は、皆の前に腰を下ろした。


「ねえ大輔、勝浩が化け物に食われたって本当なの?何かの間違いだよね?」


冗談だって言って欲しい。


そんな目で俺を見つめて、光が尋ねた。
< 82 / 272 >

この作品をシェア

pagetop