食人姫
「それは多分、あれじゃないかな。ほら、よその人には山賊もこの谷の人も一緒に見えて、この谷を呪ったとか?『ニクイ コノチノモノガ』って化け物が言ってたし」


低いテンションのまま、ボソボソと呟いた由奈。


声は小さいけど、俺が思っていた事だ。


「いや、だからおかしいんじゃないか。言ったんだろ?『ニクイ コノチノモノガ』って。襲ったのが山賊なら、この谷の人達とは関係ないんだよ。いや、もしかすると少しは繋がっているかもしれないけど……」


直人の言いたい事が全然分からない。


だから、由奈が言ったようによそ者には区別がつかないんじゃないのか?


「待って……化け物は『コノチノモノガ』って言ったんだよね?『この地の者が』……違う」


直人の顔を見て、光が何かを思い付いたかのように目を見開いた。


「皆はなぜかこの『土地の者』が憎いと思っていたようだけど、谷が憎まれているわけじゃなく、『血統の者』が憎まれてるとしたら……って事なんじゃないかな?」


コノチノモノガ……この血の者がか。


どうしてこんな事に気付かなかったんだろう。


でも、気付いたところでこの谷の人間が憎まれているという事には変わりない気はする。
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