食人姫
「よ、良く分からないんだけど、俺達の血が憎まれてるってどういう事?それならますます俺達には関係ないんじゃ……」


何とか逃げ道を探そうとしているのか、源太が焦ったように直人に尋ねる。


「良いかい源太、この谷の人は皆谷に戻って来る。女の子は高校にも行かせてもらえない。そうやってずっと、この谷で生きてきたんだ。僕と哲也は従兄弟で、哲也と源太は爺ちゃん同士が兄弟だろ?そうやって遡って行くと、ここにいる皆だけじゃない。この谷全員が親戚になるんだよ」


もちろん、この谷の人間だけで結婚しているわけじゃない。


俺の母さんは元々は街の人間だし、男の中にも婿養子で谷に来た人もいる。


そうやって、よその血を入れながら、この谷で皆生き続けてきたのだ。


つまり……直人の考えだと、そういう人達には、この儀式は関係ないという事になる。


化け物がこの血の者を憎んでいるのなら。


「そして突き詰めれば、もしかするとその山賊の血が混じってるのかもしれないね。だから化け物が僕達の血に復讐していると」


調べれば調べるほど、考えれば考えるほど、袋小路に追い詰められているような感覚になる。


何をやっても、俺達には麻里絵を助ける手段はないと言われているようだった。
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