食人姫
「おう、上がったぞ。大輔、シャワー浴びてこい。水が真っ黒になるぜ」


俺達がどうすれば良いか分からずに黙っていた時、哲也がパンツ一丁で部屋に戻って来た。


「ちょ、ちょっと!私いるんですけど!?」


当然、この場にいる唯一の女子の由奈が声を上げたけど、哲也は気にしていないようで。


由奈の事など気にしない様子でいつもの場所に腰を下ろしてタバコを咥えた。


「じゃあ、すぐ戻るわ。光、荷物をくれよ」


光に持ってくるように頼んでいた荷物を受け取り、俺は部屋を出て風呂場に向かった。


麻里絵を助ける為にはどうすれば良いんだ。


化け物が憎んでいるのは谷ではなく、俺達に流れる山賊の血。


完全にそうだと判断したわけじゃないけど、確率はかなり高いな。


考えながら風呂場に到着し、服を脱いで浴室に。


シャワーを浴びながら、今やるべき事と分からない事を整理する。


あの化け物がこの谷を憎んでいるとすれば、谷から出れば済む話だけど、それをせずに皆ここに住んでるって事は、やっぱり血を恨んでいるんだろうな。


血だとすると……あの化け物はどこまでも追って来る気がする。


どこに逃げても、隠れていても。
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