食人姫
「それは最後の手段にしよう。それ以外の可能性を考える方が先だな」


「つってもよ、他に何があるんだよ。化け物が何なのか分かっても、結局どうすれば良いかなんて分かんなかったんだぜ?」


この場を落ち着けようと、差し障りのない言葉を選んだつもりが、効果はなかったな。


哲也が言うように、化け物が何か分かったところで、俺達に何が出来るわけでもなさそうだ。


相手が何者か分かればどうにか出来るなんて大間違いだった。


知った先にあったものは、どうする事も出来ない真実だけ。


その為に勝浩は死んだようなものだ。


「ねぇ、私、どうしても分からない事があるんだけど、どうして勝浩は早い時間に化け物に襲われたの?二人が帰ってきた時はまだ外は暗くなかったのに」


突然そう言った由奈の顔を見て、俺は考えた。


それは多分、夕方だったから、いつ化け物が現れてもおかしくない時間だったんじゃないのか?














……いや、待てよ。


確かに考えるとおかしいじゃないか。


直人が勝浩を呼びに行ったのが、光と同じタイミングだとして、俺達が蔵を出た時にはまだ夕暮れ前。


その時にはいなくなっていたはずだから、化け物が現れるはずはない……と思うのに。
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