食人姫
何かが……何かが変だぞ。


夜道に人を食う化け物が出るんだろ?


儀式が済んでない俺達が夜道を歩くと、その化け物に襲われるなら、勝浩が食われた後、家に帰ろうとしている俺達に大人が誰も付かなかったのはどうしてだ?


人が食われても仕方ないと思っているからか?


いや、それだったら儀式をしようとする意味が分からない。


誰も化け物の被害に遭わせたくないから、儀式をするんだろ。


それなのにどうしてあの時は……。


「そりゃお前、あれだろ。化け物の気まぐれってやつねえの?腹が減ってた時に、近くに勝浩がいたとかそんなくだらねえ理由だろうがよ!」


話しているうちに怒りがこみ上げてきたのか、ドンッと畳を殴ってみせる哲也。


今にも「化け物をボコボコにしてきてやる!」と言って飛び出しそうな雰囲気だ。


だけど……。


「いや、違うんじゃないか?勝浩は……化け物に食われたわけじゃないと思う」


俺は、何を言おうとしているんだ。


これを言えば、皆にどう思われるか分かってるはずなのに。


それでも、俺の口は動きを止めなかった。


「大輔、化け物がやったんじゃないなら、どうして勝浩は死んだって言うんだい?」










「もしかしたら、勝浩は……誰かに殺されたんじゃないのか?」




< 93 / 272 >

この作品をシェア

pagetop