海までの道 ~あなたと私の距離~
震える手でボタンを押した。
From 晴人
なんで、どうして。
― 元気か。仕事どう?俺は、こっちの生活も慣れてきました。
この前見合いしたんだ。決められた道を進んでいくしかない人生を選ぶ情けない俺です。和香を幸せにできるわけないよな。ごめんな。こんなこと言う資格もないけど和香、幸せになって下さい―
『…晴人…』
涙が零れ落ちた。
決められた道を歩いているんじゃないよ。
自分で考えて、選んだ、立派な道。
晴人らしい、やさしさいっぱいの選択だよ。
ありがと…
いろいろな人との存在があるから、私がいるんだ。
私も誰かを支えることのできる人になりたい。
昨日はいろいろなことを考えていたから、なかなか眠れなかった。
はれぼったい目…
『元気出せ、和香。らしくないぞ、和奏』
鏡の自分に言い聞かせ、頬をパンパンとたたいた。