海までの道 ~あなたと私の距離~


…存在…


…俺となんかで幸せになれるのか…


航太の不安そうな顔が浮かんだ。


「忙しい時こそ、声が聞きたい。触れていたい。でもさ、男はなかなか自分からさみしいなんて言えないからな」


しばらく私達は何も話せずにいた。


店内から流れるイタリアの曲が耳に届く。


話してばかりだったから、音楽なんて気にしてなかったな。


情熱的な歌声。


そういえば、この前ここに来た時、風景写真を見ていた時の航太の表情も同じだった。


さみしいような、不安なような。


何かを思っているような。
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